
蕎麦が芽吹き、育ち、実ることのありがたさ。神々と水清き郷戸隠。ともに想いをかけ手をかけた一枚のそば。本日、善き日に、もてなしの心と一緒に饗応の座に上ります。
この山奥に何があるかといえば、ただただ、岩山が、水が、草木が、鳥が歓喜を唄うばかり。その聲のうるわしきを聞き、遙か昔より験者が、巡礼が、諸人が訪れ今の戸隠になりました。
戸隠の雪は深い。けれど、その雪は軽く水気が少ない粉雪。この地では一年を通し、湿気は霧となって現れることも多く、もっちりと旨味を増す戸隠名代の「霧下そば」を育みます。
晩秋に収穫した「秋蕎麦」の実は、戸隠の厳しい寒さに糖質を増して耐えるため、雪景色の頃の戸隠そばは一段とおいしいと言われます。
戸隠神社奥社参道の杉並木の左側にかつては二十年ものの宿院があり、奥院の神仏に毎日欠かさず燈明を献じ、煮食を供えました。「奥社燈明役勤方覚書」(宝永6年・1709年)の記録には「蕎麦切」献上の記載があります。神々への毎日のお供えは戸隠で現在も欠かすことはありません。
